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IDEC VOICE IDEC:International Development and Cooperation Professor interview 大学院国際協力研究科 教授インタビュー

Development Technology Course LEE Han Soo Associate Professor 主な研究 防災・減災技術および再生可能エネルギー技術による途上国における持続可能な発展を目指す

「最先端の災害科学と再生可能エネルギー資源活用による安全・安心かつ持続可能な社会発展のために」 開発技術コース 「沿岸災害・エネルギーシステム科学」研究室 李 漢洙 准教授

研究の概要と対象地域

李先生は「海洋工学」と呼ばれる分野を専門としている。古くから沿岸部では多くの人々が生活を営み、ものや人の行き来を支えるプラットホームとして利用されてきた。一方で沿岸地域は、高波や高潮、地震によって起こる津波や洪水など、災害の危険性と常に隣り合わせだ。これらの災害はいつ起こるかわからない。だからこそ予測し、防災に繋げることが重要なのである。韓国出身の李先生は、IDECで様々なバックグラウンドを持つ学生たちと共に、技術面からの持続可能な発展と環境への貢献を目指している。

災害と資源について、沿岸域を中心に根深く研究

インドネシアバンドン工科大学での招聘講演後の記念撮影

数値モデル(大気・波浪・海洋結合モデル)用の大型並列計算機

「土木部門は対象となる外力に計算し、その外力に耐えるよう構造物の設計・施工する流れになっている。私の研究はこのなかで外力を計算する部分にフォーカスを当てています。設計と施工の場合、設計コードができている。しかし、外力については設計基準を超える外力がいつやってくるかわからない。その故、気候変動と相まって沿岸域における外力はその強度や頻度を増していく可能性がある。例えば、台風の仕組みと予測、高波と高潮の仕組みと予測、津波の再現計算と災害ハザードマップ作成など、災害につながる外力についてそのメカニズムの解明・理解・予測、そしてそれらの基本となる海洋の波についての研究を専門としています。」と先生。

日本は地理的な条件上、地震や津波、台風、高潮・高波、豪雨などの自然災害に見舞われることが多い。だからこそ学べることも多いはずだ。海流、潮流、風などを海洋物理学的な観点で捉えて定量化し、数値モデルの開発・改善することで、安全・安心かつ持続可能な社会の発展を目指している。災害大国の日本を本拠地としている李先生の最先端の災害科学は、世界各地で発生する災害を防ぐことに役立てられているのだ。

また、李先生は、他にもアジア発展途上地域における持続可能なエネルギー供給戦略のために、地域気候モデリングによる再生可能エネルギー資源の評価と資源の将来変化の推定に関する研究にも取り組んでいる。

災害科学と資源活用がテーマであるこれらの研究は、現代社会において、重要性および有用性が非常に高いことから、今後もより深く、より広く発展していくだろう。

最先端の災害対策と予測を世界へ

モンゴル現地調査(2017年9月)

李先生は国際社会への関心が非常に高い。何故なら、先生がこれまで培ってきた研究成果やさまざまな経験は、国際社会に求めているからである。

「近年、海外の災害に対する考え方が変わってきているんだよ。海外では、災害は仕方ないものと捉えられていたのだけど、最近は防災意識が高まってきている。でもどの国も高度なコンピュータシステムや安定した電力供給があるわけではない。だからこそ限られた環境の中でも利用できるシンプルなモデルの作成が不可欠だ」と先生。 発展途上国であればあるほど、災害がいつ来るかを予想することは難しい。「準備」を徹底することが重要なのだ。

学者たちの間では、災害が起きたときにすぐ現地調査を行うための情報ネットワークが構築されている。李先生は時間を見つけては、海外でのフィールド調査に繰り出す。現場主義こそ先生の信条だ。研究に正確なデータは必要不可欠。自ら集めたものでないデータを扱う時も、まずそれを疑うということが必要かもしれない。なぜそのような結果になったのか、を自分で考えることも重要である。

先生は自身の経験と科学的なアプローチで災害の対策や予測に取り組み、発展途上国に貢献したいと考えている。

環境問題のメカニズムに興味があり、意欲の高い人材に

研究室集合写真-2017年10月 (9ヵ国出身の13名)

先生が担当する科目は、「エネルギー技術論」だ。


「授業では、温室効果ガスが原因とされる地球温暖化などの環境問題に対して、エネルギー消費の削減や有効な資源活用、エネルギー生産をテーマに議論をしたい。専攻分野が近い学生はもちろんだけど、開発技術を専門としない学生にもぜひ受講していただきたいね。せっかくIDECにいるのだから、他の分野についても知り、違ったものの見方ができるようになってほしい。そうすることで新しいアイデアも生まれやすくなる。」と先生。

また、どのような人材を求めているかお聞きすると、「1つのことだけに一生懸命になることも良いことだけれど、専門知識をしっかり身に着けたうえで、今世の中で起きているさまざまなことに興味を持ってほしい。例えば、ニュースを見ていても、事実や結論だけを知識にするのではなくて、何が原因か、実際の被害はどのようになっているのかなど、そういった観点を持つ人材と一緒に研究したいね」と答える先生。

コースでは学生を4つのチームに分類している。(Flooding and Inundation / Coastal hazards and mitigation / Renewable energy resource assessment / Water resource management)先生はホームページを見せながら、ひとつひとつのチームについて詳しく説明をしてくれた。個別指導に加えてチーム別でも指導を行うことで、より自身の専門を深めることができる。

自身も高校時代から波のメカニズムに興味をもっていたと語る李先生は、最後に、「『災害』は今、学術的に注目度の高い学問なんだ。楽しくて、質の高い研究生活になると思うから、災害・環境問題に技術面から貢献するという意識を持った学生にはぜひ来てほしいね」と微笑んだ。

李 漢洙 准教授

リー ハンスウ

開発技術コース 准教授

2007.10.22~ 2008.3.31 広島大学大学院国際協力研究科 COE研究員
2008.4.1~2008.9.30 広島大学大学院国際協力研究科 研究員
2008.10.1~2010.3.31 広島大学大学院国際協力研究科 特任助教
2010.4.1~2014.3.31 広島大学大学院国際協力研究科 助教
2012.1.1~2012.3.31 台湾・国立中山大学海洋科学院 客員研究員
2014.4.1~2016.3.31 埼玉大学建設工学科 准教授
2016.4.1~ 広島大学大学院国際協力研究科 准教授